2010年02月01日

摂理の果て(1)

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蔡:(つつがなく……。
    目的の場所へ移動しおえたことを、あたりを見回して、認識した。

   小さく皮肉っぽく笑ったのは、苦労して出た場所なのに、
    戻るのにはあまりにたやすかったからだろう。

   しかし、その場所も、今は活発なその活動ゆえか、
    まばゆく白く発光している……!)


   なんてことだ……黒猿と融合したんだな。
    いまや、ここはあれの腹の中か?

   この叡智の粋に対して、なんてことしてくれる。
    まったく、笑えない冗談だよ……!


   (まだ、鳴蛇やヨハネはここまで来ていないらしい。
     あたりの壁を「読んで」蔡、唇を改めて引き結ぶ。

    今の目的は、ここの動きを停止させること。
     そして、黒猿を滅し、ヨハネや鳴蛇を助け出さなければならない。

    己の作ったものであるからこそ、その巨大さは理解している……

     この、いかなる理をも分解して吸収し、力として吐き出す真奥の
    システムをいかにして止めるのか。
     どのような策があるのか……!


     ふと、そこで、鼻腔を甘い肌の匂いで満たされて、
    腕に抱いた体に目を細めた。
     涼の質量が、熱が、存在が……

     いま、心にこれほどまでに迫るのを、不可思議に感じながら)


    おい……葛葉の。
 
    ……涼?

     大丈夫か?


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    (いつも、「お前」、なぞという呼び名でしか呼んでいなかった。

     が、何故か……強く、その名を呼びたいという思いが沸き起こる。
    もしかしたら、彼女を「獲った」せいかもしれない。
     己の中、心と呼ばれるものがそこにあるとするならば、その場所に、    ぴたりと寄り添うような姿で。

     涼の存在が、感じられるのだ……。

     息苦しいような思いのなか。
    小さく目を細め、細い体を、腕で強く己の体に押し付けた)



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蔡:    涼。

      ………涼。




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蔡:(自嘲するように、笑った)

   ……以前、なぜ、僕がお前にくちづけるのかと聞かれたっけ?

  その理由がわからないなんて、まったくもって、
   予想どおりの大間抜けだ。呆れかえって言葉もでないよ。




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蔡:(涼と目を合わせずに……呟くように言った。
    まるで、独り言だ。

   その姿は、なにかの呵責から、目をそらそうとしているかに見える。)


   お前さ……。

  これが終わったら、僕と一緒に、僕の国においで。

  しばらくは追手がかかるだろうけれど、心配はない。
   蔡家の隠れ家は、無数にある。

  僕の国では、誰も僕たちに手出しはできない。



  (ふと、声のトーンをあげた)


   あぁ……! まァ、イサクたちは、怒るだろうな。

  こっち放りっぱなしにして、帰っちゃったらさ。

   真奥のシステムを復旧は、僕意外には不可能だろうしね。

  イサクはお前を僕が連れ去ったら、それこそ、激怒必至だな。
   あいつ、今はまだ、お前がここにいて、取り戻す余地があるからこそ、
  僕らの様子を見ているンだから。


  でも……勝ち抜けに罪悪感を感じるなんて、
   むしろ傲慢ってもんじゃない?


  (最後の一言は、冗談の要素もあったらしい。
    少しおどけて笑ってみせて、しかし、
   涼からのいらえがないのに、目を、少し苦しげに細めた)


   ……嫌、とはいえないよね。
  お前は、僕を選んだんだから。


  (たとえ、それがイサクへのあてつけであったとか、
    不信であったとか、それ以外のこもごもの……蔡の想像もつかない
   ような、思いの末のものであったとしても。

   今はこうして、涼は彼の腕の中にいるし、
    あまつさえ、彼を救わんとして、隷従の呪まで、完遂させたのだ。

   かくて、彼女の意思も魂も、肉体さえも、蔡は己の掌中にしている。

   それなのに。

    それなのに………!)







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2010年01月22日

朧丸顕現(4)

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朧丸;(涼を腕に抱えて、黒猿から飛びのいた。
     その飛びのき際に、幾筋もの閃光が走り、黒猿の体が、首が……
    四方から切り飛ばされ、血飛沫をあげ、その場に崩れるように転がる!
     
     赤いその血の煙の中、飛びのいた先で、涼をそっと床へおろした)

    オレを刀の姿に保てないなんて、こりゃあ、お姫ィさん、
   らしくもなく、ずいぶん弱らされたモンだ!

    もしかして、もォすぐオレが食えたりしてなァ?

   (へ、へ、と笑い、無造作にあたりをみまわした。
    面食らっている蔡の顔を不思議そうに見て、首をかしげた)

    らら? タカヤはどうした。
   あれがいないのに、オレが出てこれる道理はネェよな?


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蔡:(タカヤとは誰のことだ?
    それよりこの男は何者だ!

   しばし、放心していたが、男の腕の中にいる涼が、男の狩衣の胸を軽く
  つかんだのを見て、正気に戻った。怒鳴る!)


   お前ッ、そいつは何者だッ?
  僕をひっかけたんじゃないだろうなッ。
   一体、どうしてもう力のないはずのお前が………!



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涼:(黒い瞳に、蔡を映した。
    どこか呆けたような表情だ。

   蔡の問いには答えず、切り刻まれたはずの黒猿を振り返る。)


黒猿:(ヨハネによって切り離された腕も。
     朧丸に切り離された肉体も首も。

    うごめきながら、床に溶けてゆく。

     のみならず。
    壁に縫いとめられていたヨハネと鳴蛇すら。
     その体が、みれば、すでに半身が、
    壁の中に埋まりつつあるではないか!)


蔡 :(あまりの光景に息を呑んだ。

     と、同時に、瞬時にして理解する。
    何が起こっているかを……!

     巨大な魔のはらわたに、飲み、覆い込まれている感覚に、
    一瞬、偽りなく総毛だった。)


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     黒猿。お前……《アーク》に……!


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黒猿:(床に呑まれながら、同じ体が、うすぼんやりと廊下の上に。

     再び、悪夢のような姿で顕れ、蔡を見つめる。
    青白い長身!)


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朧丸、涼:(黒猿と再び対峙した。

       朧丸。
      ちらりと舌で唇を湿し、目を細める)


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     (涼。
      蔡を静かに見て、そののち、黒猿に向け、すくりと立った)



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     (朧丸の腕が、涼の体から離れる。
      指示されたわけでもないはずだが、黒猿の前に進んだ。

       顎を上げ、目を細める。
      見下すように見て、ほんのりと笑った)



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朧丸:お姫ィさん……なんかいつもと様子が違うなァ。

    なんか、イヤァな感じだ。


   (気づいたか。蔡の方を、ちらりと見た!)



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   だが、何して欲しいのかはビシビシわからァ。
   
    おい、サンピン。

   (蔡から目を離し、黒猿を仰いだ)


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   悪いがお前が死んでくれねぇと、オレぁ、姫ィさんに、ことの次第も
   ただせねぇ。

   ここはすっぱり消えてくれ。   
     


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黒猿:(朧丸の言葉を最後まで聞いていたのか、いないのか。
     魔どうしであるから、何か響くところがあるのか……
    白い瞳を、じろりと動かし、朧丸を上から下までねめつけた。

     かと思うや。
    無造作に、ぐいと白い腕を伸ばす)


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(今は海上の巨大な城と化した《アーク》が、まるで身震いするように、
     激しく震えた!

    黒猿の姿が薄くなり、また、鮮明になりしながら、朧丸に近づく。
     その背後では、ヨハネと鳴蛇の姿が、完全に壁に飲み込まれようと
    している……!)


朧丸:(黒猿の表情に、何かを感じたように。

     小さく、眉を寄せながら、顔をゆがめた)

    なぁ。
     もしかして、お前、オレのこと、嫌いだな?


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黒猿:(それは、消えてくれだのなんだのといわれて、相手を好きでいる
    やつもおるまいと思うが。

     それでも、だ。

    黒猿が歩を詰めるのにあわせて、天井の照明が砕け、
     無数に朧丸の上に降り注ぐ。

    微動だにせぬ朧丸のまわりを、無数の銀光が閃き、
     破片を千万のかけらに砕いてゆく。

    そのなかで。

     朧丸を見つめながら、黒猿、にぃぃと笑んだ。

    それは、蔡には造られなかった機能。

     白い目の中に灯る憎悪とも悦楽ともとれる光ともども。

    黒猿は、あきらかに、これを「楽しんで」いる……!)


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蔡:(黒猿の笑みに戦慄した。

    その戦慄を吹き払うように。涼に、叫ぶ)

   ……来いッ!


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涼:(無言のまま、蔡を見つめる)


蔡:(焦れたようにその手を?んだ!
    涼の体をぐいと自らに引き寄せると、鳴動しつづける船を、
   押しとどめるように、両の足で踏みつける)


   ……来いッ! もう一度、あそこへ行くッ!


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   《アーク》の真奥を……破壊するッ!





                       次章《摂理の果て》に続く!
    
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2009年12月20日

朧丸顕現(3)

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涼:(黒猿の前へ、再度、挑みかかった。

もっと確かな何かをつかまなくては、事態打開の糸口もつかみようがない。
まずは黒猿が何をもって、このような変幻を遂げたのか、それがわからぬことには、対処のしようがない……!)


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黒猿:(涼が向かってくることには視点を合わせない。

見ているのは蔡のことのみだ。
が、その胸から、不意に鋭い槍が突き出した!

背後からかかる叫び声は……!)


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ヨハネ:(黒猿の胸を貫いた鳴蛇の後ろから、変化した黒猿の姿に目を剥く。

涼の姿は視界にいれず、蔡に叫んだ)

蔡ッ! 無傷だろうなッ?
憎まれッ子は世にはばかれよッ?



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蔡:(誰が憎まれっ子だよと言う顔を一瞬したが。

あきらかにほっとしたように、けれど、それだけに無神経に。
鳴蛇を叱責する勢いで、悲鳴じみた非難の声をあげた!)

やめろッ……そいつは無傷で捕獲するんだッ。
鳴蛇、槍を引けッ!


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鳴蛇:(一瞬、すべての動きを停止した。

が、すぐ、指示どおりに槍を引き抜くとその場に棒立ちになる。
蔡の指示を待つ顔だ。

その不自然な無防備にさらに害意どころか関心もなさげな黒猿の一瞥が浴びせられる。)

黒猿:(先程あけられた槍の傷口はそのまま紙にあいた破れ跡のようにそのまま開いている。

鳴蛇に無造作に手を伸ばした)


鳴蛇:(あきらかにそれまでとは違う動きで。激しく、身をのけぞらせた。
     鳴蛇に触れた黒猿の手が、手首から先が、ない。
    いや。鳴蛇の体に、そのまま、溶け込んでいる………!)


蔡 :(鳴蛇の体に起こったことが何であるのか、確かに見える位置にいたのは     この男だけだった。

    目を剥き、鳴蛇を引き戻そうとヨハネが腕を伸ばしたのに、反射的に、
     静止の絶叫をあげる!)

    さ、触るな、ヨハネッ! お前まで……ッ!


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ヨハネ:(蔡の絶叫に、思わず手と身を同時に引いて、その場から飛びのこうとした。瞬間、鳴る蛇の背中から、黒猿の長い爪を備えた腕が生え出し、まるでそれそのものが槍であるのかのように、ヨハネのその背を襲った。

 トレードマークのざんばら髪が、ざくりと裂かれて、天井に舞う。
その後ろを、血飛沫が彩る………!
 ヨハネの体が、勢いの良く半円を描いて、数メートルも先に吹き飛ばされた。そして、かすかなうめき声が聞こえたのみで、後は生死のほども疑わしい……)



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涼:(顔をこわばらせて一部始終を見ていた。
    本当なら助けに飛び出したいところだったはずだが、体が動かなかった。

   まだ……片方の腕のひじ辺りから手首あたりがあるはずのところに、
  己の腕を貫き通したように見える鳴蛇の体をぶらさげながら。

    のろりと自分を振り返ってくる黒蛇に、戦慄する。

   それは、これまでも、異様でない敵はなかったが。
  そのときは、イサクに自慢の「力」を奪われてなどいなかった。
   魔を押しひしげるだけのものを持っていた。

   だが、今は……無手だ。

   馬鹿馬鹿しいくらい、なにもない!)


蔡:(
  近づいてくる黒猿の有様は、もはや、彼の理解の範疇を超えている。

  あの鳴蛇を、あの黒猿がくだす?

   考えられぬ……!

  しかし、唇まで真っ青にしていたのは、
   唯一と言っていい友人の、あり得ぬ姿を、
  目の当たりにしてしまったからだろう。

   己が黒猿を生け捕りにしろと命じたことも忘れたように。

  まるで、このときばかりは子どもに戻ったような顔で、
   友の名を、絶叫した!)


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涼:(その絶叫にハッとなった!

    振り返れば、まるで泣きそうな顔をしているではないか。

   傲慢で、鼻持ちならない天才青年が。

    そして、その表情をみてしまった自分の中に生まれるゆらぎに、
   鼻白む。
    なんということだ。胸が痛んだ。
   あの男が悲しみを露にしたのを見て、どうして自分がショックを
    受けなければならぬのか、その理由がわからないが。

   涼……大きく顔をゆがめて、再び黒猿を見返した。

    まったく、なんということだ!

   どうにか……してやりたくなってしまっているではないか!
    己の心がわからない。

   わからないが……最悪の手段が、頭に浮かんでしまった。
    そしてもう、迷う時間がない!

   蔡へ向かって、後ろざまに、素早く言った!)

    私を獲れ……!


蔡:(涼の言葉は聞こえたが、意味がわからなかった。
    顔をしかめて、睨む!)


涼:(己のシャツの胸の上を押し開くようにして、
    蔡の手の甲に浮かぶものと同じ呪字を指し示し、叫んだ!)

   私を、獲れ!
  そのための呪なのじゃろうがッ!

   飾りでないなら、そちの力をみせてみよッ。
  そして、先と同じ命を再度下せッ。
   さすれば、まだ、道はある……ッ!!!


蔡:(理解した。

    理解はしたが、納得はできなかった。

   信じられぬことを聞いた顔で、怒鳴り返す)

    僕の「人形」になるってッ?
   おまえがッ?
    いま、この状況でッ?

   それでなんの活路があるっていうんだよッ!
    しつこいのとしぶといのだけが取り得だろうにッ!


涼;(もう、目前まで黒猿が来ている!

    鳴蛇はすでに動かなくなった。
   だらりとたれた足先が、絨毯に細い線を描いている。

    悲鳴のような声で叫んだ!)

   迷うなッ!

    お前が私を獲れば、兄上の課された私の禁がひとつほどける!
   さすれば、私は、アレが呼べるのじゃ!
    蘇芳との修行でもとりもどせなんだ、兄上が禁じて異界に封じられた、
   私の刀が………!


蔡:(涼の言葉を最後まではきちんと聞けなかった。

    涼が近づいてくる黒猿の懐に、自ら飛び込んで行ったからだ。

   その理由もわかった。
    一度は倒れたヨハネが起き上がり、己の手袋をはずしながら、
   黒猿に飛び掛ろうとしている。

    ちょうど涼とヨハネで黒猿を挟撃する形だ。

   その、涼へ向け、己の手をかざし。
    背に、言われるがままに呪を結ぶ……!)


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涼:(ヨハネの掌が、黒猿の腕を切り落とすところを眼前に見た。

    鳴蛇をそのままひきよせたその体に、まだ、鳴蛇の体から
   生えたままだった黒猿の腕の先が、槍のようにひきのびて、
    ヨハネの肩を貫通し、そのまま、壁へと突き刺さる。

   標本のように壁に縫いとめられたヨハネと鳴蛇。

   そして、己の眼前には、黒猿の口が、三倍にも広がって、
    一気に己を飲もうとしている……にもかかわらず、体が、
   凍りついたように動かぬ。

    意識が真っ白に漂白されてゆく。
   もはや、己が誰であったのかもわからぬ。

    遠いかなたに、なにか、やけに光輝くものが見えた気がした。

   それが死かと、理解した、瞬間………!)



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  :遅ぇ……遅すぎるよ、お姫ィさん。

    あんまりほったらかしにしすぎると錆びちまうって言ったろう? 


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                     朧丸顕現(4)へ………!
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